FMIジャパン発信記事①『小型店の時代がやってきた?!』

註)この記事は、FMIが集め、整理した新聞・雑誌の中から、「店舗開発 一般」に属するこの半年の記事を、FMIジャパンがまとめたものです。


■相次ぐ小型店出店
 このところアメリカでは小型店のフォーマット開発が相次いでいる。
 セイフウェイ(本社・カリフォルニア州)は今年5月、カリフォルニア州ロングビーチの既存店を小型店『ザ・マーケット』に転換した。同様の小型店フォーマット開発は、スーパーマーケットをチェーン展開してきた企業の間で盛んだ。たとえば、ジュエル・オスコ(本部・イリノイ州)、ジャイアント・イーグル(本社・ペンシルバニア州)、ユークロップス(本社・バージニア州)などはセイフウェイ同様、小型の実験店を出店。また、自然食スーパーマーケットのホールフーズでも小型店出店の計画が発表されている。
 ここでいう小型店とは、店舗面積1万~2万平方フィート、つまり280坪から560坪ほどの店舗を指す。アメリカのスーパーマーケットの店舗面積は年々拡大し、扱い品目数もそれに伴い増大していた。しかし、FMIの統計によると、20年間拡大し続けてきた平均店舗面積は2007年に前年の数値を割り込み、47,500平方フィート(約1,340坪)へと微減傾向を示している。
 スーパーマーケット研究家でSupermarketguru.comやFMIとニールセン社で共同発行する”Facts, Figures & The Future”の編者として知られるフィル・レンパート氏は、ニューヨークタイムズ紙9月10日号に次のように語っている。「(スーパーマーケットでの)買い物時間は22分ほど。とても3万、4万アイテムを見ることは無理。今までよりも少ない品揃えを求める時代に突入している」。
 たしかに、現代人は時間に追われて生活し、食料品の買い物に費やす時間をなんとか節約したいというニーズを持っている。さらに、このところの内食化傾向に伴い、レストランと同じレベルの食事を家庭で味わいたいというニーズも高まってきた。また、景気の減速や原油の高騰は、ガソリン代節約や環境保護のために食料品の買い物は近場で済ませたいというニーズを呼び起こした。
 とはいえ、これらの消費者ニーズに応えた今回の小型店出店ブームの前から、小型店への注目が集まっていた。アルディ(本部・イリノイ州)やセイブ・ア・ロット(本部・ミズーリ州)、トレーダージョーズ(本社・カリフォルニア州)などがその代表格として挙げられる。
 今回の小型店が、これらの店舗と大きく異なるのは、アメリカでチェーン展開するスーパーマーケット企業が出店している点。そして、家に持ち帰ってすぐに食べられる高質な調理済み食品、青果などに力を入れている点だ。短い買い物時間でほしい商品をさっと買える、持ち帰った後も簡単に食事が準備できるようにすることで、時間に追われる忙しい消費者を取り込もうという明確な狙いがこれからも見て取れる。


■小型店化の裏事情
 今回の小型店化に拍車をかけたきっかけは、テスコがアメリカに進出し、昨秋より急速出店をしている『フレッシュ&イージー・ネイバーフッドマーケット』(店舗面積・10,000平方フィート)だ。テスコにマーケットシェアを奪われる前に、小型店のフォーマット開発のスピードを加速。早く軌道に乗せ、店舗網を築いておこうというのが、アメリカのスーパーマーケット企業側の意図である。
 加えて、このところの競争の多様化も小型店開発のきっかけのひとつとなった。イギリスから進出してきた巨大小売企業テスコや自国ディスカウンターが展開するスーパーセンターは明らかな脅威だが、目立たない形でも食品の売上は奪われている。ドラッグストアやダラーストア、コンビニエンスストアなどが食品に力を入れ始めているのだ。明らかに競合が多様化する中で、“近くて便利”を提供するのは急務となっている。
 スーパーマーケット・チェーン各社が小型店出店に力を入れ始めたのには、それら以外にも、理由がある。ひとつには、大型店の出店余地があまり残されていない状況で、企業規模拡大の手段のひとつになると考えたこと。加えて、いざ出店となると、大型店と比べ、遥かに損益分岐点が低いため、出店の決断が出しやすいことが挙げられる。
 あるいは、既存店の中には古くて小さな店が残っている。そうした店舗の再生手段にもなり得ることも理由のひとつだ。たとえば、前述のセイフウェイの場合、店舗面積15,000平方フィート(約420坪)の既存店がまだ20店ほど残っているのだという。


■ウォルマートも参入
 10月11日、ウォルマートは、アリゾナ州フェニックス大都市圏に4店の小型店を出店。小型店市場に参入してきた。
ウォルマートの新フォーマット『マーケットサイド』は店舗面積15,000平方フィートで、今まで最小フォーマットだった『ウォルマート ネイバーフッドマーケット』の3分の1の規模。小型店を出店する他社同様、調理済み食品や食材セットなどの簡便商品を強化した売場となっている。同じく他社同様、自然食品の品揃えも充実させた。約300アイテムの自然食品を取り揃えた。ちなみに、ウォルマート広報によると、総アイテム数は5000~7000SKUであるという。価格は、従来型のスーパーマーケットよりも安く、ウォルマート・スーパーセンターよりも高めの設定になっている。
 各社の小型店を価格帯別に分類してみると、ローエンドはアルディなど。ウォルマートの『マーケットサイド』もこれに属する。トレーダージョーズも同等の商品を扱う競合と比べると価格訴求型だ。一方のハイエンドはカリフォルニア州本拠のブリストルファームズなど。セイフウェイの『ザ・マーケット』はその中間の価格を狙っている。
 また、テスコの『フレッシュ&イージー』はあらゆる所得層を狙う、全方位型のMD戦略を標ぼうしている。
 果たしてウォルマートは今後、『ザ・マーケット』を多店舗展開していくのか。注目が集まるところだが、多くの専門家が否定的な予測をしている。業績順調なスーパーセンターに資本を集中するだろうこと。『ウォルマート ネイバーフッドマーケット』がそうであったように、生鮮品が現状のレベルでは消費者から多くの支持を得られないだろうことなどを、専門家は理由として挙げている。そういう点から見ても、さらには立地戦略に長けている点から見ても、むしろセイフウェイの『ザ・マーケット』の方が成功する可能性が高いというのが専門家の見解だ。
 その『ザ・マーケット』のSKUは、4,200と見られている。セイフウェイの通常店舗のSKUが20,000から28,000というから、4分の1ほどに絞り込んだことになる。カリフォルニア州を本拠とするダットン・アソシエーツ社のアナリスト、ジョナサン・ジーグラー氏は、スーパーマーケット・ニュース誌の取材に対し、「アイテム数を絞り込むと、消費者の購買行動を学ぶことができる。それを自社が展開する大型店に転用できる」と指摘している。
 小型店は当面スーパーマーケット業界全体に影響を与えることはないとの見方が一般的だ。しかし、前述のジーグラー氏の指摘を言い換えれば、たとえ実験店舗としての小型店出店であっても、既存店の体質改善、競争力強化につながる可能性を秘めている。そういう意味での影響力は未知数だ。
 どの企業のどの小型フォーマットが成功するのか。どのようなマーケットで成功するのか。今後の動向が注目される。